職人によって漉かれた紙は商品として均一性を求められているが、漉かれた紙の個性的な部分は唯一「耳」に現れるといってもよい。そこには職人に漉かれた紙に無意識に神(川上御前)がやどっているように感じる。その個性とは、厚さであり波形であり表情であり同じ耳は存在しない。何度も見つめ触りながら受け止めていくことで、個性を受容できる感受性が自分にはあるかを問い直していく。また、その個性を引き出してくれるもう一つは墨である。それぞれの個性に相応して墨は表情を描き出していく。そこには耳と墨による緊張感と折合いが見られる。その一枚一枚を並べていくことにより、紙にやどった神との関わりを深める作業が好きなのである。
※耳:主に手漉き和紙において、自然な繊維の状態が残っている紙の端のこと